バラ切花には花持ちが悪いという問題があり、これまでにも切花の老化遅延を目的に様々な研究がなされている。バラなどは花弁が開いていく過程を楽しむ花であるため、老化を遅らせるだけでなく開花速度そのものを調節することができれば、観賞期間をより長くし切花の品質向上が期待できる。開花は花弁細胞の肥大により引き起こされ、その細胞肥大には細胞壁の伸展性が重要な要因となっている。本年度の研究により、バラ花弁細胞壁の伸展性に関わるタンパク質として、エクスパンシンおよびエンド型キシログルカン転移酵素/加水分解酵素(XTH)についてそれらの重要性が明らかとなった。まず、バラ花弁から3種類のαエクスパンシンcDNAを単離した。それぞれのエクスパンシンについてmRNAの発現をバラ花弁の発育ステージ別に解析した結果、3つのエクスパンシンは異なった発現パターンを示しており、バラ花弁肥大成長に対しそれぞれ異なった時期に機能している可能性が示唆された。さらに、エンド型キシログルカン転移酵素/加水分解酵素(XTH)について、バラ花弁から4種類のXTH cDNAを単離した。mRNAの発現を花弁の発育段階別に解析した結果、蕾から開花する段階で発現が急激に上昇しており、開花にXTHが関与していることが示唆された。また、XTHの阻害剤がバラ花弁の成長に一定の阻害効果があることが示唆され、現在引き続き詳細を検討中である。
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