本年度は以下の四点について実験及び検討を行った。 1.ワケギ特有の食感に関与する内容化学成分の同定ワケギ3品種と葉ネギ3品種の葉身由来細胞壁多糖類の分画および定量を行った。得られた分画の中で、ワケギのプロトペクチンの含有量がネギと比べて有意に増加しており、ワケギの食感形成にはプロトペクチンの含有量が強く関係することが示唆された。 2.特有内容成分の生産に関する遺伝系の解明ワケギにおいて増加が認められたプロトペクチンについて、シャロットの染色体(1A-8A)を1本ずつ添加したネギ系統(添加系統)において一年間定量を行った。その結果、対照区と比較して7Aおよび8A添加系統のプロトペクチン含量が秋期に著しく増加し、その後冬期になると急速に減少することが明らかとなった。したがって、プロトペクチンの代謝に係わる遺伝子が7Aおよび8A染色体上に集中して存在することが示唆された。 3.特有内容成分の生産に関与する遺伝子のDNA多型解析ペクチンの代謝に関与するペクチンエステラーゼ(PE)の三種類のホモログに対してPCRプライマーセットを合成してシャロットとネギおよび添加系統のゲノムDNAを用いた多型解析を行った。その結果、一種類のPEが7A染色体に座乗することが明らかになった。 4.重複異種染色体添加系統シリーズの作出重複異種染色体添加系統が完成していない3Aと7A添加系統の茎頂部をコルヒチン添加MS培地で培養して染色体倍加個体の作出を試みた。3Aから10個体と7Aから20個体の茎頂部を調整して培養を行った。その結果、3Aから1個体および7Aから3個体の生存実生を得ることに成功した。
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