研究概要 |
本年度は、栽培ギク神馬および野生ギクキクタニギクを用いて、前者についてはFT,CO,CO-rep,Toc1,CCA1の後者ではFT、COの形質転換体を得た。これらの植物をin vitro、16時間日長のもとで培養したところ、神馬、キクタニギクの両者ともFT転換体のみで花成が誘導された。 神馬FT形質転換体は、得られたすべての系統でin vitroおよび順化した後の非誘導条件日長条件下で開花が認められた。これらをホルモンを含まない培地で継代培養したところ、普通葉を数枚展開した後に花芽を形成し、下位の腋芽が栄養芽として伸長を開始、幾枚かの普通葉を展開した後に再び花芽を作った。中にはかなりの長期間栄養成長を継続するシュートも観察された。キクタニギクでも同様の反応を示したが、下位の栄養芽の発達が不良で、栄養シュートの維持がやや困難であった。対照に用いたタバコFT転換体ではほぼすべての茎頂が順次花となりやがで枯死に至った。以上のことから、キクのFT転換体における栄養成長と生殖成長を繰り返す反応は宿根草の性質を反映したものと考えられた。 神馬FT形質転換体および形質転換していない神馬をそれぞれ穂木または台木としてin vitroで接ぎ木を実施した。FT形質転換体を穂木または台木としたいずれの組み合わせにおいても、形質転換していない神馬に花成を誘導することはできなかった。また接ぎ木をした形質転換していない神馬のシュート部位からRT-PCRによりFTm-RNAの存在は確認できなかった。 FT以外の形質転換体はin vitroでも順化した後も非誘導条件目長条件下で花成の誘導は観察されなかった。
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