研究概要 |
In vitroで継代培養したキク'神馬'のFT形質転換体を使用し,栄養成長を示す(V)シュートの上位節と下位節,花芽分化した(R)シュートの上位節と下位節の腋芽由来のシュートにおいて,葉が4枚展開したときから経時的に上位から3枚目の葉を採取し、real-time PCRを行い導入FT遺伝子発現量の経時的な変化を調査した.Vシュートの上位節および下位節を用いたすべての処理区において,発生した腋芽由来のシュートは花芽分化せず,採取1回目と2回目の間で導入FT遺伝子発現量の大幅な減少が認められた.一方,Rシュートの上位節から発生した腋芽由来のシュートは花芽分化し,導入FT遺伝子発現量は維持されていた.これらのことから,FT形質転換ギクの花芽分化は,導入FT遺伝子発現量が維持されることで生じることが考えられた.また上位葉に比べ下位葉ほど導入FT遺伝子発現量が多いことが示された.これより,Pmas dualプロモーターは下位節ほど目的遺伝子の発現を誘導することが示唆された.このことから,FT形質転換体が上位節に比べ下位節から発生した腋芽由来のシュートが花芽分化しやすい要因として,Pmas dualプロモーターの性質が影響していることが考えられた.さらに継代40日後Vシュート, Rシュートの上位葉,中位葉,下位葉の導入FT遺伝子発現解析を行った.腋芽由来のシュートが花芽分化しない場合,生育に従い葉で導入FT遺伝子発現量が著しく減少していたことから,上位節でPmas dualプロモーターの発現誘導が減少するという性質と一致していることが考えられた.一方で,花芽分化を誘導する場合,Pmas dualプロモーターの発現はキク植物内の何らかの性質により維持される可能性が考えられた.
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