研究概要 |
モモの矮性台木として、ユスラウメやニワウメを使用すると接ぎ木当初は生育が良好であるが、5、6年を経過すると接ぎ木不親和症状を示して樹勢が衰えてくる問題がある。従って、接ぎ木親和性のある共台(強勢台木)を使った矮化技術の開発が早急に求められている。環状剥皮はこれまでにも、果実肥大や果実品質の向上、結実年齢の短縮、花芽形成の促進といった技術に用いられてきた。主幹部の周囲を完全に剥皮した後、その部分が癒合しないと、植物体はやがて枯死してしまう。そこで、主幹部を完全に剥皮するのではなく、主幹の上下を連結する樹皮を残す部分的環状剥皮を行った。残された樹皮の形成層の活動によって、樹皮は再生してくる。これまでの研究によって、この樹皮の再生と地上部の新梢に生長には正の相関関係があることが分かっている。本研究は、化学物質によってこの樹皮の生長を抑えることによって、モモの矮化ができないかを調査したものである。まず、野生モモ台の'あかつき'1年生苗を30cmの素焼き鉢に植え、地上部から15cmの主幹部に幅2mm長さ2cmの連結樹皮を残して部分的環状剥皮を行った。化学物質として、アブシジン酸(ABA)、ヒノキチオール、トロポロン、KCNを使った。濃度は0,0.1,0.5,1.0%とした。これらの化合物はラノリンペーストとして処理した。剥皮した主幹の木質部に処理した実験では効果が見られなかったが、連結樹皮に処理した実験では部分的環状剥皮だけより生長抑制が見られた。環状剥皮を行った主幹部の下では糖やデンプンの濃度が上部に比べて低い傾向が見られた。次に、圃場に栽植された野生モモ台の5年生'日川白鳳'モモ樹について、地上部から15cmのところに、幅5mmx長さ5cmの連結樹皮を残して、部分的環状剥皮を行い、樹皮部分にKCNのラノリンペースト(濃度:0、0.1、0.5、1.0%)を処理したところ、部分的環状剥皮処理以上にモモの樹体生長が抑えられた。
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