研究概要 |
ジャカランダ(Jacaranda mimosifolia D.Don)はアルゼンチン北部の乾燥した亜熱帯地域に自生する高木性の花木で,初夏,青紫色の花を枝先に房状につけ,その美しさからもっとも観賞価値が高い熱帯花木のひとつとされる. 昨年度の研究で,北部九州におけるジャカランダの形態的花芽分化の開始は4月初旬であり,6月には開花に至ることが明らかとなった.このことはジャカランダの花芽分化に冬季の低温がなんらかの影響を及ぼしていることが示唆された.そこで,本年度はジャカランダの接ぎ木株に対する低温処理が花芽分化に及ぼす影響について調査した. ジャカランダの2年生実生を台木とし,ジャカランダ成木の前年伸長枝を穂木として接ぎ木した.接ぎ木後は無加温ガラス温室内で通常の管理で栽培し,栽培全期間を通じて無加温ガラス温室内で栽培する区以外の株はすべて2007年10月1目に自然日長下のファイトトロン25℃区に搬入した.その後,25℃恒温条件下で栽培する区,および2007年12月1日からファイトトロン15℃条件下で2週間,1,2,3および4ヶ月間栽培したのちに25℃条件下で栽培する区の7処理区を設け,着蕾株数,開花株数等について調査した. その結果,15℃で2,3,4ヶ月間栽培した区と無加温ガラス温室区では着蕾したすべての株が開花に至ったが,15℃・1ヶ月間栽培区では花蕾が極端に小さく開花に至らずに落蕾した.着蕾,開花株数が最も多かったのは15℃・3ヶ月間栽培区であり,同4ヶ月栽培区が続いた. このことから,ジャカランダの花芽分化には低温(15℃)が必要であり,1ヶ月以上の低温遭遇により着蕾が促進されるが,正常な開花には少なくとも2ヶ月以上の低温期間が必要であると判断された.
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