国営滝野すずらん丘陵公園において移動制限を有する人々の公園利用実態をアンケート調査によって把握した。調査は、主要入口に専用のアンケート記入用デスクを設け、2名の要員を配置、利用者に直接記入してもらう形式で実施した。対象者は、コントロールデータとしての高齢者(歩行支援機器無し)、また、移動制限を有する人々として、杖利用、手動車いす(持ち込み、または貸し出し)、電動車いす(貸し出しシニアカー)、ベビーカーの利用者とした。その結果、高齢者を中心とした移動制限タイプ毎の利用率を見ていくと、利用率が高い方からカントリーガーデン、こどもの谷、森のすみかの順で、これは主要入口から近い順に相当した。移動制限タイプ別では、高齢者と杖利用についてはあまり差異がない一方で、手動車いすで全体として利用率が低く、電動車いすでは手動車いすよりは行動範囲が広いことが読み取れた。一方、ベビーカー利用者については、他の移動制限タイプとは世代やニーズが異なるため、利用率の傾向がかなり異なり、こどもの趣向性や提供プログラムの違いが反映されていると考えられた。これらのうち、手動車いす利用者が著しく園内の利用範囲が限られたこと、電動車いす利用者の各施設の利用率が総じて高かったことは新たな知見と考えられた。現有のバリアフリーガイドライン等においては、段差や傾斜、幅員などの記載はあるものの、距離や支援機器についてはほとんど触れられていないが、本調査結果からはこれらが大きな要素であり、バリアフリー計画にあたっては積極的に考慮に入れる必要があると考えられた。
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