植物は、病原体の感染に対して防御に関係する遺伝子が瞬時に活性化できるように事前にスタンバイする機構を備えている。この瞬時の反応をプライミングと呼んでおり、有用微生物が植物の根などに定着することでスタンバイ状態になる。プライミング機構を解明する鍵となる遺伝子は、1)防御遺伝子の発現にかかわる転写因子の持続的な発現と、2)シグナル伝達系で働くタンパク質の活性化の調節に関与するキナーゼが関わると推察されている。そこで本研究課題では、植物ホルモンのジャスモン酸によって誘導される防御遺伝子であるトマトのプロテアーゼ阻害剤遺伝子(PIN2)を指標として、PIN2の発現のプライミングに関与する遺伝子を探ることを目的とした。遺伝子を探索するにあたり、PIN2の発現誘導よりも速い段階で発現変動する遺伝子群を網羅的に解析し、特に転写因子とキナーゼ遺伝子に着目した。 MeJA処理によるプロテアーゼインヒビターPIN2遺伝子の発現誘導解析 マイクロトムトマトの根部にMeJA (100uM)を処理しPIN2遺伝子の発現誘導パターンをノーザン分析により経時的に解析した。その結果、PINII遺伝子は4〜8時間で最大になった。この結果より、4時間よりも早い2時間目での遺伝子発現を解析することがよいと判断した。 MeJA処理トマトの網羅的遺伝子発現解析とPIN2遺伝子より速く誘導または減少する遺伝子の選抜 MeJA処理2時間目のトマト根部での遺伝子発現をトマトのcDNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。対照として0.1%MeOH処理トマトとの間で比較解析した結果、全約1万遺伝子のうち2倍以上増加した遺伝子は186、1/2以下に減少した遺伝子が131存在した。この内、転写因子は6遺伝子、キナーゼは4遺伝子存在した。候補に選んだ遺伝子は恒常発現するベクターを構築し、PIN2プロモーターに蛍光レポーター遺伝子を連結したベクターと混合してトマト葉内で一過的に発現させ、蛍光が観察できる遺伝子を今後選抜する。
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