1)本年度はNbCdc27B遺伝子が抑制的な因子として働いている可能性について分子解析を進めるために、このNbCdc27B遺伝子の全長、N末端半分、C末端半分をベンサミアーナタバコにおいてそれぞれ-過的に過剰発現させることによる防御応答反応への影響を調べた。その結果、全長とC末端半分では直視による観察とトリパンブルー染色において細胞死を抑制しているように見えた。遺伝子発現解析はまだ予備的実験の段階ではあるが、一部の防御関連遺伝子については発現が抑えられているように見えた。このことは過敏感反応現象においてはNbCdc27B遺伝子が抑制因子として働いている可能性を支持している。今後は遺伝子発現解析とともにこの因子の抑制的機能の分子機構についても解析を進めたい。 2)本年度我々はイネでのサポニン生合成経路上流のステップであるOxidoSqualene Cyclase (OSC)遺伝子とP450sterol demethylase遺伝子についてDNAデータによる分子進化学的解析と遺伝子発現の分子解析から、OSC遺伝子については11個中5個の遺伝子が、またP450系sterol demethylaseについても12個中3個の遺伝子がサポニン生合成に関与する遺伝子群の候補であることを明らかにした。さらにエンバクが生産するアベナシンサポニンがイネの病原菌にも有効かどうかを検討したところ、オオムギうどん粉病菌、イネいもち病菌、イネごま葉枯れ病菌いずれの病原菌に対してもアベナシン200μg/mlの最終濃度で顕著な抗菌活性を示した。今後はOSC遺伝子の遺伝子発現が確認された5遺伝子についてbeta-amyrinやcycloartenolの前駆体であるoxidosqualeneを蓄積する変異体酵母を用いてOSC酵素活性を検討したい。
|