研究概要 |
1)昨年度来のT-DNAがアグロバクテリア菌から欠落する問題は35Sプロモーターと目的遺伝子間にイントロンを組み込み、アグロバクテリア菌内での目的遺伝子の発現を制限することによって菌の増殖問題が解決された。そこでNbCdc27B遺伝子が防御応答に抑制的な因子として働いている可能性について改めて分子解析を進めるために、このNbCdc27B遺伝子の全長、N末端半分、C末端半分をベンサミアーナタバコにおいてそれぞれ-過的に過剰発現させることによる防御応答反応への影響についてイントロン導入ベクターを用いて再度調べた。その結果、INF1エリシチンを用いたエリシター刺激による過敏感細胞死を抑制しているような明らかな結果は得られず、さらに様々な防御応答遺伝子発現にも顕著な変化は見られなかった。このことは本因子の単独過剰発現による防御応答反応への明確な影響は見られないことを示していた。本因子は他の多くの因子と複合体を形成し、防御応答シグナル伝達に関与する制御タンパク質の分解消化に関与している可能性が高く、単独での過剰発現では防御応答反応に影響を与えなかった可能性がある。2)昨年度に行ったエンバクのOxido Squalene Cyclase(OSC)遺伝子であるbeta-amyrin synthase遺伝子(AsbAS1)を導入した形質転換イネの作出について,本年度はその次世代選抜組換え体(T1世代)種子を5ライン得た。この5ラインのT1世代幼苗についてはハイグロマイシン耐性と供にAsbAS1遺伝子の染色体への導入がPCRにより確認できた。 次いでその遺伝子発現についてRT-PCRによる確認を行ったところ、3ラインについては遺伝子発現が確認されたが、残りの2ラインは発現が確認できなかった。恐らくこれら2ラインは導入外来遺伝子へのエピジェネティックな現象により発現が停止しているものと考えられた。今後、この組換えイネの代謝産物の化学分析を行いたい。
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