イネの重要病害である白葉枯病菌は、感染時に特異的にtype IIIとよばれるタンパク質分泌装置を構築する。本装置を介して植物細胞内に分泌される病原性関連タンパク質が、植物の抵抗反応を抑制する、遺伝子発現を撹乱する、あるいは細胞死を誘発し、感染を成立させると考えられている。本課題では、本分泌装置の構成成分をコードする遺伝子群hrpの感染特異的な発現を可能にする外界シグナルの受容機構の解明を目的としている。白葉枯病菌の外界シグナル受容体候補として、二成分制御系のセンサーキナーゼ遺伝子およびTonB-dependent receptorを考え、本細菌のゲノム解析を行うことにより、それらの遺伝子の探索を行った。その結果、二成分制御系のセンサーキナーゼ遺伝子が40個、そして、TonB-dependent receptor遺伝子が33遺伝子存在することを明らかにした。これらのうち前者については34遺伝子を、また後者については6つの遺伝子について破壊変異株を作出し、その病原性への関与を調べた。その結果、TonB-dependent receptorについては病原性の低下した変異株は得られなかったが、センサーキナーゼについては、少なくとも5つの変異株で病原性の低下が認められ、これらの遺伝子の病原性への関与が示された。また、これと同時に本細菌のtype III分泌タンパク質の同定およびCyaレポーターアッセイ系によるこれらのタンパク質の植物細胞内への分泌を確認した。シグナル受容体遺伝子変異株におけるtype III分泌タンパク質の植物細胞内への分泌を見ることにより、これらの遺伝子のhrp遺伝子発現への関与を明らかにすることが可能になると考えられる。
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