イネの重要病害である白葉枯病菌の植物侵入時特異的な病原性関連遺伝子の発現機構を明らかにする目的で、環境シグナル受容機構の一つである二成分制御系、そして微量要素の効率的吸収システムであるTonB-dependent receptorに着目し、それらの病原性への関与、とくに本細菌の最も重要な病原性遺伝子であるhrpの発現制御について調べた。前年度の成果として得られた病原性に関わる2つの二成分制御系遺伝子の機能を明らかにするため、マイクロアレイ解析を実施した。その結果、一方の二成分制御系は、細菌の病原性因子の一つとして知られる鞭毛の形成を負に制御することを明らかにすることができた。他方の二成分制御系では、酸化ストレスに対する耐性に関わる遺伝子の他、数種の既知病原性関連遺伝子の発現に関わることがわかった。しかし、いずれもhrp遺伝子の発現への関与は見られなかった。また、白葉枯病菌はそのゲノム中に少なくとも38のTonB-dependent receptor遺伝子をもつが、これらのそれぞれについて欠損変異株を作出することに成功した(本年度は32の遺伝子変異株を作出)。これらの病原性への関与を調べたところ、少なくとも4つの変異株でイネへの病原力の低下が確認され、これらの遺伝子産物がイネ葉内での細菌増殖に必要な微量要素の吸収に関与することが明らかとなった。他の植物病原細菌ではTonB-dependent receptorの一つがhrp遺伝子の発現誘導に関与すると報告されているが、本研究で得られた白葉枯病菌の病原性に関連するTonB-dependent reiceptorの中には、hrp遺伝子の発現に関与するものはなかった。
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