トマト黄化えそウイルスなどのトスポウイルスは各種アザミウマによって永続的に伝搬されるため、多種の野菜類、花卉類に大きな被害を及ぼしている。アザミウマはウイルスに感染した植物を吸汁することによりウイルスを獲得し、その後虫体内でウイルスが増殖し伝搬能力をもつ。しかし、ウイルスの獲得・伝搬能力には個体差、アザミウマを採集した地域よって差がみられるが、その理由は明らかにされていない。トスポウイルスは最初に腸管の細胞に感染することから、腸管内に生息している細菌がウイルスの獲得・伝搬に何らかの影響を及ぼしていると予測された。日本各地で採集したミカンキイロアザミウマを催芽したソラマメで集団飼育し、虫体をアルコール殺菌後、磨砕しNA培地に塗布して細菌を分離した。分離された細菌の色調などのコロニータイプ、グラム染色性、形態、カタラーゼ活性、オキシダーゼ活性、16S rRNAの塩基配列などを調べた結果、いずれの個体からも少なくとも複数の細菌が分離された。また、1頭あたりの細菌数、細菌の種類には同一集団内での個体差、地域差が認められた。細菌の種類はBacillus、Serratia、Erwinia、Tsukamurella属などであった。今後、APIテストなどを行ない細菌の種の同定を行なう必要がある。 また、アザミウマ虫体内のウイルス量をモノクローナル抗体とポリクローナル抗体を用いたTAS-ELISAにより測定した結果、幼虫、成虫1頭からウイルスを検出することが可能であった。今後、虫体内のウイルス量を調べ、伝搬試験を行なうことにより腸管細菌がウイルスの獲得・伝搬に及ぼす影響が明らかになるものと期待される
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