研究概要 |
本年度は,胚子発生初期に新規なRNAヘリケース様タンパク質(RHL)をリン酸化するキナーゼとして見いだしたカゼインキナーゼ2(CK2)の発生過程おける活性変動,卵内での分布と局在,活性調節機構解明の前段階であるリコンビナントCK2の調整などを主に行った。その実績の概要を以下の(1)〜(4)に示す。 (1)産卵直後からおよそ60時間目までの休眠卵・非休眠卵を12時間おきにサンプリングし,それぞれからCK2を含むタンパク質標品を調整しその活性を比較したところ,非休眠卵ではステージが進むにつれて活性が増大し、休眠卵では産下後24時間で活性が最大となりその後は減少するという興味ある結果が得られた。 (2)CK2を構成するαとβの両サブユニットをコードするcDNAをクローニングしRT-PCRによる遺伝子の発現解析を行ったところ,酵素活性の変動とは一致しなかった。この結果から初期胚におけるCK2の活性調節は転写レベルでは無い事が明らかとなった。 (3)カイコCK2のαとβ両サブユニットをコードするcDNAを発現ベクター(pET14bやpColdI)に組み込み大腸菌(BL21)を形質転換しリコンビナントCK2αとβサブユニットを発現させたところ,αサブユニットは,可溶性画分に発現させる事に成功したが,βサブユニットは,不溶性画分に回収されたので,その精製とリフォールディング法等を検討したところ,順調に実験が進み可溶性タンパク質として得る事に成功した。 (4)産下後12〜60時間の非休眠卵の切片と抗CK2α抗体を用いた免疫組織化学的解析では,RHLと同様に卵黄細胞の核周辺部に局在が認められた。また,それ以外に卵黄顆粒や胚の細胞中にも局在が認められた。また,次年度のために休眠卵の切片の作成等の検討を行った。
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