研究概要 |
本年度は,カイコ由来のリコンビナント・カゼインキナーゼ2(rBmCK2)用いた活性調節機構解明と休眠卵・非休眠卵を用いた免疫組織化学解析によるCK2αとCK2βの局在性の解明を行った。その実績の概要を以下の(1)〜(4)に示す。 (1)rBmCK2のα(rBmCK2α)とβサブユニット(rBmCK2β)を用いて活性測定を行った結果, rBmCK2α単独で活性があり, rBmCK2βを添加しても活性に変化がなかった。しかし, rBmCK2β存在化でポリリジンを加えると活性が増大した。 (2)タンパク質のC末端部分の配列が異なるショウジョウバエ由来のリコンビナント・カゼインキナーゼ2β(rDmCK2β)2種を用いてrBmCK2αの活性に対する影響を調べたところ, C末端部分の配列が長くなるほど, rBmCK2αの活性が減少する事が明らかとなった。 (3)カイコガの休眠卵に多量に含まれている物質であるソルビトールと3-ヒドロキシキヌレニン(3-OHK)がrBmCK2の活性にどのように影響するのかも解析したところ,ソルビトールは影響を与えなかったのに対して,3-OHKは, rBmCK2α単独の活性に対して濃度が低いときには活性化剤として,また濃度が高いときには阻害剤としてはたらく興味深い結果が得られた。 (4)休眠・非休眠卵(産卵後12,24,60時間)を免疫組織化学用に固定,包埋した切片と市販の抗CK2α抗体と今回作成した抗BmCK2β抗体を用いて,卵内でのCK2αとCK2βの分布と局在の観察を行った。その結果,産卵後12時間では休眠・非休眠卵では胚盤葉の細胞に局在が観察されたが,24時間目以降では非休眠卵では卵黄細胞の細胞質と核に局在が観察された。一方,休眠卵では,胚子に局在が観察され,その分布の違いが明らかとなった。
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