研究概要 |
これまでの研究によって、チャバネアオカメムシにおいて卵吸収に伴うタンパク質分解の場としてろ胞細胞が重要であり、そこでシステインプロテアーゼ型のタンパク質分解酵素、おそらくはカテプシンL様のタンパク質分解酵素が作用することにより卵黄タンパク質などの分解が起こると推定された(Kotaki,2005)。さらに卵巣抽出物ばかりでなく卵抽出物にもタンパク質分解活性が認められた。これらの他いくつかの予備実験の結果に基づいて、卵内に含まれるタンパク質分解酵素がろ胞細胞にとりこまれ、そこで活性化されてビテロジェニンなどのタンパク質を分解するのであろうという作業仮説を設定した。平成20年度には、平成19年度に得られた4つのタンパク質分解酵素遺伝子の塩基配列に基づき、それぞれに特異的な抗体の作成をした。4つの酵素のうち3つはウサギやマウスにおいて十分な抗体価を有する血清を得ることができなかった。しかし、ウェスタンブロッティングにはある程度使用可能のようだったので、これらを用いて局在性や卵吸収誘導との関連を調べた。卵巣や卵の抽出物にはカテプシンFおよびL様のタンパク質分解酵素に対する抗血清に反応するものが含まれることが示された。しかし、卵吸収の誘導との関係ははっきりしなかった。また、幼若ホルモンの生産器官であるアラタ体の摘出や移植、化学合成された幼若ホルモンの塗布等の処理を行い、体液中の幼若ホルモン濃度の低下によって卵吸収が誘導されることを示唆する結果を得た。
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