ピレスロイド抵抗性のネッタイイエカJpal-per系統の終齢幼虫期において、シトクロムP450の活性増大がピレスロイド解毒代謝の主要因となっている。この系統で特異的に高発現しているP450の分子種がこれまでにいくつか特定されたが、その中でもCYP9M10分子種は、殺虫剤感受性の小笠原(OGS)系統と比べ、mRNAで300倍という非常に高い発現量を示す。CYP9M10遺伝子の高発現にはゲノム中のコピー数増大と転写調節機構における変異の双方が関わり、また、過剰転写の遺伝子的要因はシス作動性である。過剰転写をもたらす変異を明らかにするために、今年度は、両系統のCYP9M10構造遺伝子の周辺配列を解析した。JPal-per系統からは、強い連鎖関係にあるが上流の近傍配列が異なる2種類の配列タイプ(type1と2)が見つかった。また、Jpal-per系統とOGS系統のCYP9M10遺伝子近傍配列を比較したところ、いくつかの特徴的な挿入/欠失が見つかった。そのうち1つは、JPal-per系統の2つの配列タイプに共通して存在し、転写開始点の上流1kb以内に位置する約0.7kbのDNAトランスポゾン様配列の挿入であった。CYP9M10構造遺伝子の配列に含まれるNot I制限酵素認識配列の上流と下流のそれぞれの近傍配列をプローブとして用い、パルスフィールド電気泳動に基づくサザンプロッド解析を行った結果、type2配列を含む増幅単位のサイズは約100kbであり、その増幅単位はhead to tailの向きでタンデムに並んでいることが示された。
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