リン酸質肥料の原料であるリン鉱石の枯渇が予想され、また農耕地に施用・蓄積した有機態リン酸は作物には直接利用されにくいことから、作物による土壌からのリン酸獲得能の向上が必要とされている。本研究では、陸上植物の7割と共生関係を形成しているアーバンキュラー菌根菌が土壌中に放出する酸性ホスファターゼを利用した有機態リン酸の利用効率の向上を目指す。今年度は(1)高ホスファターゼ分泌菌のスクリーニング、(2)毛状根を用いた高ホスファターゼ分秘菌の培養による酸性ホスファターゼの精製と性質解明を試みる。(1)高ホスファターゼ分泌菌のスクリーニング国内外の各種土壌からアーバスキュラー菌根菌をトラップ培養により分離し、これらをタマネギに接種し、コンパートメントポットで生育させ、菌糸コンパートメント及び根コンパートメントから土壌溶液を回収し、p-ニトロフェニルリン酸と反応させ、生成したp-ニトロフェノール量よりホスフォモノエステラーゼ活性を測定した。Glomus clarumおよびGigaspora decipienceの外生菌糸の浸出物が他の菌と比べて高い酸性ホスファターゼ活性を示した。(2)毛状根を用いた高ホスファターゼ分泌菌の培養による酸性ホスファターゼの精製と性質解明ニンジン毛状根に(1)で得られた高ホスファターゼ分泌菌を接種し、無菌的に培養した。胞子の発芽と外生菌糸の伸張が観察されたが、菌根形成は観察されなかった。
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