研究概要 |
今回は特にAl、重金属などの金属ストレスや酸化ストレスに対する植物の耐性機構について分子遺伝学的手法を用いて以下の点について研究した。 1) A1耐性野生植物、メリケンカルカヤ(Andropogon virgihicus L.)とススキ(Miscanthus sinensis)からのA1ストレス誘導性遺伝子群の単離 Finger printing法により、上記の2つの植物からA1誘導生遺伝子の候補群を単離した。これまでに各々から最終的に16個と9個の候補クローンを得た。これらの内、メリケンカルカヤの分についてA1ストレス下での発現量をRT-PCR法で解析した。その結果、7クローンに関しては確かな発現誘導性を確認できた。ススキについても検討を試みたが、得られたRNAサンプルの精製度が悪く確認にまで至っていない。 2) メリケンカルカヤからのA1ストレス耐性遺伝子群の直接単離 上記の誘導性遺伝子群からの間接的選抜のみならず、直接的な耐性遺伝子の単離も試みた。今回は、A1処理を施したメリケンカルカヤ由来のmRNAを用いてcDNAライブラリーを構築し、この中から酵母のスクリーニングシステムを使って耐性遺伝子の選抜を試みた。5つの候補遺伝子が得られたが、再現よく耐性をしめしたのは2候補(#3A-4,#5B-2)であった。DNA配列を決定した結果、前者はS-adenosyl methione sysnthetase(SAMS)をコードしていたが、後者は機能未知の蛋白質と思われた。今後SAMSの耐性機構との関わりについて検討していく予定である。 3) 両植物を用いたA1処理によるプロリンの合成量の検討 重金属ストレスや酸化ストレスでは、生育阻害の現われのためプロリンの合成量が上昇することが知られている。A1ストレスにおける合成量を検討した結果、両植物では少ないことが判明した。A1耐性であることとよく一致している。今後、感受性植物シロイヌナズナでの合成量も検討する予定である。 4) 両植物を用いたA1処理による蛋白質合成量の検討 2次元電気泳動法によるストレス誘導型蛋白質群や抑制型蛋白質群の生成状況を検討し始めた。今後、特に誘導性蛋白質群については、耐性遺伝子単離に向けて活用する計画である。
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