研究概要 |
1) 重金属集積植物の解析 重金属を高集積するような耐性植物を選抜、検索するために、メリケンカルカヤ、ススキ、イヌビエなどの6種の野生植物に対してCd,Cu,Znなどの重金属ストレスを付加し、植物体内への集積の状況や同時に発生する酸化ストレス(脂質酸化物の蓄積)の状況を経時的に測定している。現在も継続して解析中である。 2) ケリケンカルカヤの示す多種のストレス耐性機構の解明 メリケンカルカヤは、Al,Znなどの金属ストレスやH_2O_2、diamideなどの酸化ストレスに対して耐性を示す。そこでこの多種耐性機構に関連すると考えられる遺伝子群の単離と解析を試みた。まずAlストレスを付与したメリケンカルカヤから全RNAを抽出し、逆転写によりcDNAを調製しcDNA libraryを構築した。さらにlibraryからAl,Cd,Zn.diamide,H_2O_2等に耐性を示すクローンの単離を行った。その結果、其々のストレスに対していくつかのクルーンが得られたので、さらにその耐性について再現性を確認した。さらに挿入されていたcDNA断片に関して塩基配列を決定し、その機能の推定を行ったところ、AL3A-4クローンについては、SAMS(S-adenosyl methionine synthetase)遺伝子であることが明らかとなった。しかし、残りのクローンついてunknown proteinであった。SAHS遺伝子の完全長cDNAを得て、これを導入した酵母形質転換体についても感受性試験を行った。その結果、この形質転換体も金属ストレス、酸化ストレスに広範囲に耐性を示した。 3) メリケンカルカヤやススキ由来のAl誘導性遺伝子群からの多種ストレス耐性遺伝子の単離 これら2つの植物より既にAl誘導性遺伝子を8クローン単離していたが、これらがAlを始めとする上記の多種ストレスに対して耐性を示すかを検討した。2つのクローンを持った酵母形質転換体が酸化ストレスに耐性を示したが、他のクローンはどのストレスにも影響を与えることは無かった。これら2つは、ストレス誘導性であり、且つ酸化ストレス耐性であると考えられる。塩基配列情報からは、それらの機能の推定はできなかったが、来年度も継続して解析する。
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