研究課題
野生植物のメリケンカルカヤは、Al、重金属、酸化等のストレスに広く耐性を示す。その耐性機構を解明し、他の植物に応用できれば問題土壌への植物作付けが可能となり農業上大変有益である。このような観点から以下の基礎研究を進めた。1) Al耐性機構に関する生理学的解析まずAl処理した根と地上部の中のAl含有量を測定した。その結果、土壌から吸収した毒性Alを根に過剰蓄積しないように地上部へ輸送することが耐性となる要因の1つであることが示された。また、地上部に輸送されたAlは、葉の表面のトライコームに集積しやすいことも明らかにし、葉の表面から外界へ排出される可能性を示唆した。また、メリケンカルカヤなど5種類の野生植物を用いてAl、Zn、Cr金属ストレスにおける根から地上部への毒性金属の輸送についても比較した。その結果、Alでのみメリケンカルカヤで地上部への高い輸送活性が見られた。2) ストレス特異的なNO(nitric oxide)の生成についてAlを含めた金属ストレスや温度ストレス下にあると応答の1つとしてNOを生成する植物がある。そこでNO特異的なDAF-FMを用い、メリケンカルカヤの根でもNOが発生することを確認した。またNOの発生阻害剤で予め処理した後にAl処理してみると、Al処理にも関わらずNOの発生や酸化ストレスの生成が抑制された。これは、3者間の強い関連性を示しており、NOの生成は毒性機構の現われであると同時に、抗酸化作用を引き起こすことへ繋がる重要な現象と考えた。3) Alや多種のストレスに応答する遺伝子群の分子遺伝学的解析メリケンカルカヤより、Alストレス誘導性遺伝子群や耐性遺伝子群の単離も試みた。前者の1つとしてABC transporter遺伝子を得たが、Al、diamideによって根で誘導されるものの、Cd、Zn、過酸化水素にはむしろ根で逆に発現抑制が見られ、異なる応答を示した。また、後者の1つとして、S-adenosyl methionine sythetase(SAMS)遺伝子を得た。現在両者の完全長ORFが単離された。
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http://www.rib.okayama-u.ac.jp/sentan/index-j.html