研究概要 |
日本各地における土着ダイズ根粒菌の優占株を明らかにするため、北海道・福島・京都・宮崎・沖縄の土壌から遺伝子型の異なるダイズ3品種(Akishirome or Bragg: non-Rj, CNS: Rj2Rj3, Fukuyutaka or Hill: Rj4)を用いて各地土壌を充填したポットに播種し、グロースチャンバー内で栽培した。一定期間栽培後、土着根粒菌を分離し、16S-23SrDNA ITS領域のPCR-RFLP解析によって、ダイズ根粒菌の分布と多様性を解析した。感染根粒菌の群集構造の差を、遺伝子多様性を指標として数理生態学的に解析した結果、特にRj2Rj3遺伝子型ダイズに感染する根粒菌の群集構造は他の遺伝子型とは異なることを明らかにした。また、根粒菌の分布と土壌中での占有率に影響する環境因子として、緯度(土壌温度)に着目し、緯度に沿った根粒菌分布が起こっていることを極座標付けによって明らかとした。さらに同じ地域であっても土壌pHが7.6-8.0を境に土壌におけるB. japonicum・B. elkaniiとS. frediiの優先度が逆転することが明らかとなり、土壌pHがダイズ根粒菌の多様性に影響を与えていることが明らかとなった。今後、環境因子と土着ダイズ根粒菌の特性を明らかにし、関連遺伝子の同定と機能解明を進めていくことによって、窒素固定能の高い根粒菌の人工接種技術の改善及び感染効率の向上が見込まれ、収量の増加が見込まれる。さらに将来的に、同様の技術を緑肥等に応用することにより、様々な作物での窒素の減肥が可能となり、環境保全型農業に資するものと期待される。
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