研究概要 |
本研究では栽培温度がダイズ根粒菌の感染に及ぼす影響を明らかにするため、5遺伝子型7品種(non-Rj: Bragg, Rj2:IAC-2,Rj3:D-51, Rj4:Hill, Rj2Rj3Rj4: A-250-3、B349、C242)のRj保有ダイズ品種を土壌試料に播種し、異なる栽培温度で栽培した場合の根粒占有率について調査した。土壌試料にはこれまでの研究から土着化しているダイズ根粒菌の分布が明らかとなっている福島の土壌試料を用いた。栽培温度は低温栽培(18-23℃)、中温栽培(23-28℃)、高温栽培(28-33℃)の3処理区とした。低温栽培では、全体的にUSDA123系統株の占有率が高く、その占有率は栽培温度が高温になるにつれて減少した。また、低温栽培では着生しなかったB.elkaniiであるUSDA76系統株とUSDA94系統株は、栽培温度が高温になるにつれてその占有率を高めた。低温栽培と中温栽培ではRj2遺伝子を保有するダイズ品種でUSDA110系統株の占有率が他のダイズ品種より高かった。高温栽培ではいずれのダイズ品種でもUSDA110系統株の占有率が他の株の占有率より高くなった。以上のことから、栽培温度や宿主のRj遺伝子によって着生する根粒菌の群集構造が異なることが明らかとなった。低温栽培においては北海道など北日本に優占しているB.japonicum USDA135系統の株の占有率が高くなり、高温栽培においては南日本に優占しているB.elkaniiの占有率が高くなるという結果は、Bradyrhizobium属ダイズ根粒菌の緯度に沿った分布が温度による感染効率の差異にも影響を受けている可能性を示唆した。ダイズの栽培温度による影栽培温度や宿主遺伝子型による根粒菌の根粒占有率に関する詳細な研究を通じて、有効な接種技術の開発が期待される。
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