研究概要 |
本年度は、1)グルカンの酸性置換基の存在が細胞に及ぼす影響、及び2)グルカンの酸性置換基の存在が共生能に及ぼす影響 の2点の探索を重点的に実施した。その結果、1)については野生株とcep変異株との間で注目される性質の違いは観察されなかったが、2)に関連して、以下の成果を得た。ミヤコグサを用いた接種試験より、cep変異株は、根粒形成初期で停止する表現型であることが判明した。次にこのFix^-表現型が抑圧された共生能擬似復帰変異株のスクリーニングを行った結果、共生窒素固定能が野生株と同程度に回復した2株と、共生能が一部回復した2株の計4株分離することに成功した。Cepへの挿入変異によって生じるFix^-原因を追求する目的で、野生株、cep変異株、抑圧変異株の間でグルカンの比較分析を行った。その結果、cep変異株で減少していた全グルカン量及び酸性グルカン量が、抑圧変異株では野生株レベルに回復していることを見出した。同時に、cep変異株を含めたグルカン合成能欠損変異株で見られる運動性の低下などについても、抑圧変異株では回復していた。更に、グルカンの構造を決定するため、中性グルカンと酸性グルカンをそれぞれNMR分析に供した。その結果、既知のRhizobiaceae細菌の場合と同様に、グルコース残基が全てβ-1,2結合した環状構造を有し、酸性グルカンには、更にglycerophosphoryl基とsuccinyl基がグルコースのC-6位に結合していることが明らかとなった。以上、cep変異株のFixは、サイクリックグルカン合成量の低下、もしくは、そのうちの酸性グルカンの消失が原因であることがより確実となった。
|