研究概要 |
シアノバクテリア(藍藻)は、進化においても重要な位置を占め、生命現象について研究する良い材料であるばかりか、資源・環境問題でもしばしば注目されるモデル光合成生物である。本研究課題では、シアノバクテリアの一種Synechocystis sp.PCC6803転写装置(RNA polymerase,RNAP)におけるシグマ因子(σ factor)SigFに着目し、これまで光合成生物において全く知られていなかったグループ3型シグマ因子のプロモーター認識能について解析することを目的とした。 初年度にあたる平成19年度は、繊毛形成や運動性に関与するpilA遺伝子のプロモーターをSigFが特異的に認識している事を、細胞内ならびに試験管内で明らかにした。pilA遺伝子の転写開始点をプライマー伸長法により決定したところ、予想されるプロモーターは一ヵ所であることが判明し、これをPpilA1-54と命名した。再構成RNAP-SigF酵素と鋳型pilA1プロモーターを混合し、転写反応させた後、高解像度の転写産物解析を行った。その結果、pilA遺伝子の翻訳開始点からそれぞれ12塩基、32塩基上流にコア配列を有する新規プロモーター構造を発見するに至った。更に興味深い事に、PCC6803細胞内では、PpilA1-54からの転写は、SigFにのみにより認識され、他のグループ1ならびに2や3型シグマ因子によっては認識されなかった。 以上の結果から、SigFグループ3型シグマ因子のプロモーター認識能は極めて厳密であり、新規のプロモーター配列を認識している事が明らかになった。本研究成果は、グループ3型シグマ因子の機能について新規で重要な知見を与えた。
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