研究概要 |
膜外のシグナルを受けて,膜に局しているプロテアーゼが転写因子を負に制御している抗転写因子蛋白質を物理的に切断して,転写を活性化する情報伝達機構があらゆる生物に保存されており,近年注目されている。細菌では,ECFσ因子と膜結合型の抗σ蛋白質との結合が,膜局在プロテアーゼによって切断されることで制御されている。 枯草菌の7種類のσ因子-抗σ蛋白質システムの詳細な制御機構は未だ不明であるので,本研究ではこれを明らかにし,さらに生物がシステムとして有している機能ネットワーク構造の総体をも明らかにすることを目的としている。 1)σ因子と抗σ蛋白質の相互作用をもたらす,アミノ酸残基,立体構造を解析する。σ因子-抗σ蛋白質システム間の相互作用の特徴を比較検討し,特異性を生み出している,アミノ酸残基,立体構造を解析する。枯草菌に近縁の4種類のBacillus属細菌間で保存されているECFσ因子,SigWとSigMについて,酵母ツーハイブリッド法を用いて,σ因子-抗σ蛋白質蛋白質間の相互作用をモニタした。枯草菌以外の菌のSigWと抗SigW間,あるいはSigMと抗SigM間にも相互作用は検出された。しかし,SigWと抗SigWは種をこえて全ての組み合わせで相互作用したが,SigMと抗SigMの相互作用は種特異的であった。現在サイトディレクテッド変異法を用いて,相互作用に重要なアミノ酸残基の検出を試みている。 2)抗σ膜蛋白質の制御に関わる膜局在プロテアーゼを捜索する。ランダム変異をトランスポゾンにより誘発し,抗σ蛋白質の制御因子のスクリーニングを行った。数種類の候補株のトランスポゾンの挿入部位を同定した。機能未知な遺伝子も多く,現在解析中である。 3)以上の解析で明らかとなった因子,モデルについて,in vitro転写系を用いて解析する。Non-RIのジコキシゲニン標識による系の構築を行った。
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