研究概要 |
1.抗σ蛋白質の制御因子の探索 トランスポゾン変異法を用いて,グラム陽性土壌細菌Bacillus subtilis(枯草菌)168株の7つの抗σ蛋白質の制御因子のスクリーニングを行った。その際,σ因子の活性はσ因子が転写に関与するプロモーター断片とβガラクトシダーゼ遺伝子の融合遺伝子を用い間接的に,寒天培地で形成するコロニーのままで測定可能である。候補株のトランスポゾンの挿入部位をPCRとDNAシーケンスにより同定した。候補遺伝子をいくつか単離しており、その遺伝子の破壊株を用いて、実際にσ因子の活性に影響を与えることを確認した。 また,抗σ蛋白質は膜蛋白質であるので,細胞表層の構造変化が立体構造の変化を引き起こす可能性も考えられる。細胞膜リン脂質の組成を変化させることができる,細胞膜構成成分のリン脂質合成遺伝子の変異株や種々の細胞壁合成欠損株を用いて,σ因子の活性を測定したところ、σMについては、影響が見られた。 また、GFP(緑色蛍光蛋白質)を抗σ蛋白質に融合し,細胞内での局在性を観察した。 2.σ因子-抗σ蛋白質の相互作用の分子機構の解明 酵母ツーハイブリッド法を用いて,枯草菌の7種のσ因子-抗σ蛋白質間の相互作用を観察した。PCRランダム変異導入法やサイトディレクテッド変異法を用いて,抗σ膜蛋白質に部位特異的変異を導入し,酵母ツーハイブリッド法で,アミノ酸変化が相互作用に与える影響をモニタしたが、変化は見られなかった。現在SigWとSigMについて網羅的な解析を行っている。同様に相互作用に必要な最小のペプチド鎖(ドメイン)をσ因子において決定し,このペプチドを他の蛋白質に融合させ,抗σ蛋白質によって活性を制御させる系の構築を試みた。
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