研究概要 |
立体構造に基づいて植物と微生物のファミリー19キチナーゼを比較解析し、それぞれのキチナーゼの構造と機能の相関を解明するとともに、応用への足がかりをつくることが本研究の目的である。平成19年度は、イネと放線菌のファミリー19キチナーゼ(Cht2とChiC)の活性ドメインとキチン吸着ドメインの構造を詳細に比較し、それぞれの違いが酵素機能に与える影響の解析を開始した。 1、Cht2とChiCの活性ドメインにみられる局所構造の違いとその機能。Cht2には、ChiCにない3つのループ構造がある。Cht2からループIIを削除した欠失変異キチナーゼを構築した。Cht2,ループII欠失Cht2,ChiCを用いて、各種の基質に対する分解活性、生成物、抗真菌活性などを分析したところ、ループIIの欠失は、オリゴ糖の切断位置を還元末端側にシフトさせ、+3サブサイトの親和性を大幅に低下させた。このことからループIIが+3サブサイトを形成していることがわかった。 2、Cht2とChiCのキチン吸着ドメインの違いと、酵素機能への影響。Cht2とChiCのキチン吸着ドメインはアミノ酸配列も立体構造も全く異なっており、この違いがそれぞれのキチナーゼの機能に重要であると予想される。ChiCのキチン吸着ドメイン表面に露出したTrp59とTrp60が吸着に重要であることがわかっている。その周辺残基の関与を調べるために、部位特異的変異をおこなった。その結果、Thr43, Glu64, Gln62, Asp70が吸着に関与する事がわかった。一方、Cht2のキチン吸着ドメインついては、その発現系構築を試みたが、まだ大量発現に成功していない。
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