まず枯草菌細胞壁のテイコ酸を特異的に検出する実験手法を確立することを目的とした。最初にDAPIでDNAを染色したphi29ファージを用いてテイコ酸の検出を試みたが、宿主に対するファージDNAの注入が非常に早く、宿主のDNAも短時間で染色されてしまうことがわかった。そこで次に、蛍光標識されたconcanavalin A(AF488-ConA)を用いて枯草菌細胞の染色条件を検討したところ、氷上で20分間染色したものが最も明瞭に染色されることが解った。またテイコ酸のグルコース修飾に関与するgtaB遺伝子破壊株では、蛍光は全く観察されなくなった。このことからAF488-ConAはテイコ酸のグルコース残基を特異的に検出していることが明らかになった。しかしながら、野生株の染色パターンは細胞表面全体的に均一ではなかった。これはメジャーテイコ酸とマイナーテイコ酸におけるグルコース修飾の違いに起因している可能性が考えられた。すなわちConAはマイナーテイコ酸にはほとんど結合できず、メジャーテイコ酸の検出の妨げとなっている可能性が考えられた。そこでマイナーテイコ酸合成遺伝子をコードするggaAB遺伝子を破壊した変異株を用いて染色パターンを調べた。その結果、野生株に比べて非常に均-な染色パターンが得られたことから、今後はマイナーテイコ酸欠損株をバックグラウンドとして、蛍光標識プローブであるAF488-ConAを用いることにより、枯草菌細胞壁におけるメジャーテイコ酸の修飾機構を明らかにしていくこととした。 また、テイコ酸輸送に関与するTagGHの条件変異株の作成に時間を要したため、これらの株を用いたLytF-6xFLAGの局在部位観察はこれから行う予定である。同様に奈良先端大・石川助教の協力により、酵母2ハイブリッド解析の準備も整いつつあるので、今後解析を進める予定である。
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