昨年度までに、glucoseを特異的に認識するレクチンであるConcanavalin A (ConA)を用いたmajor WTAの局在観察法を確立した。本年度はConAを用いて、GtaBおよびTagEの発現量を制御することにより、major WTAの細胞壁修飾メカニズムの解明を試みた。GtaBおよびTagEそれぞれの枯渇時の細胞をConA-TMRで染色した結果、全く染色されないことがわかった。GtaBはmajor WTAおよびリポテイコ酸(LTA)にグルコースを供給するために必要な酵素であり、グルコース1リン酸をUDP-グルコースに変換する。GtaBにより生産されたUDP-グルコースは、TagEによりmajor WTAのグリセロールリン酸の繰り返しユニットにおけるC2位のグルコース修飾に用いられる。また同様にUDP-グルコースはUgtPによりリポテイコ酸の細胞膜リン脂質への結合に必要なアンカー部分に変換される。従ってTagE条件変異株においてConA-TMRが全く結合しなかったことから、ConA-TMRはmajor WTAに含まれるグルコース修飾部位を特異的に認識していることが明らかになった。また、GtaBを枯渇させた細胞に関してその発現をIPTGで誘導した場合、約60分後から細胞側面に螺旋状の蛍光が現れ始め、最終的には細胞全体に均一な蛍光が観察された。逆にGtaBとTagEをそれぞれ枯渇させていくと、細胞側面から螺旋状に蛍光が弱くなり、最終的には全く蛍光が見られなくなった。これらの結果から、major WTAは細胞側面において螺旋状に修飾されていることが明らかになった。
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