研究概要 |
担子菌キノコの子実体ができる仕組みについては不明な点が多い。そのため、人工栽培によって安定に子実体を作ることができるキノコの種類は限られている。貴重なキノコを効率よく人工栽培するためには、子実体形成の機構を分子レベルで理解することが重要である。これまでにエノキタケを実験材料に用いて、子実体形成時に特異的に発現する遺伝子を約600個分離した。この中には子実体形成の鍵となる遺伝子が含まれると考えられる。分離した遺伝子のはたらきを調べるためエノキタケにおける遺伝子操作系の開発を行ってきた。 1. 実験室内における簡易子実体栽培法の確立 管ビン内に作成したおが屑培地にエノキタケ菌糸を十分に生育させたのち、菌掻き、注水、低温処理により子実体形成を誘導し、約40日間で子実体を成熟させる方法を確立した。本手法を遺伝子組換えエノキタケに適用することで、特定遺伝子の発現抑制が子実体形成に与える影響を適切な封じ込め条件を備えた実験室内で確認することが可能となった。 2. RNA干渉用バイナリーベクターpFungiwayの有効性確認 RNA干渉を利用して特定遺伝子の発現を抑制するために、バイナリーベクターpFungiwayを構築した。エノキタケ複核菌糸における有効性を検証するため,adenosine deaminase growth factor (ADGF)ファミリー細胞増殖因子に相同なタンパク質をコードするFv-ada遺伝子の発現抑制を試みた。Fv-ada遺伝子を挿入したpFungiwayによる栄養菌糸の形質転換体では,程度の差はあるものの,すべてにおいてFv-ada遺伝子発現が抑制されていることをRT-PCRにより確認した。
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