ジベンゾチオフェン(DBT)脱硫酵素の中でRhodococcus erythropolisおよびBacillus subtilis由来のDBTモノオキシゲナーゼ、DszC、BdsCは、DBT分子の硫黄原子に酸素を付加する反応を触媒する酵素とされてきた。しかし、BdsCの場合はインドールに作用し、インジゴ生成が認められることが明らかにされており、DBT以外の類似化合物への反応性が示されている。今年度は、インドールならびにベンゾチオフェン(BT)の誘導体に対するDszC、BdsCの反応性を検討した。その結果、BdsCはこれらの化合物を基質にできる一方、DszCはBTに対しては作用するが、インドールには全く働かないことを明らかにした。また、BdsCはインドールよりもメチルインドールを良好な基質として利用することがわかり、本酵素の新たな反応性を示すことができた。一方、褐藻中に多量に含まれ、硫酸化された多糖であるフコイダンを分解資化できる微生物を海洋環境から3株単離した。それぞれの菌株の16SrRNA遺伝子配列の結果から、これらのうち1株はFlavobacterium属細菌、2株はLuteolibacter属細菌であると考えられた。後者2株は難培養性微生物であるとされており、LB培地では生育は認められなかった。すべての菌株において、フコイダン分解活性は細胞内に存在しており、フコイダンの分子量低下とともに、還元末端の遊離が認められた。また、酵素的な硫酸基の遊離も同時に起こることが明らかになった。これらの菌株はグルコースを単一炭素源としても生育するが、フコイダン分解酵素の生産はグルコースによって抑制を受けるとともに、フコイダンによって誘導的に生産されることが示唆された。
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