研究概要 |
特定の保存菌株の乳酸菌と酵母菌の組み合わせで顕著な複合バイオフィルム形成が行われることを既に明らかにしてきた。また当該乳酸菌の培養濾液中で組み合わせ相手の酵母菌を培養すると酵母菌が単独でバイオフィルム形成が行えるようになることも明らかにしてきた。本研究においてその乳酸菌(Lactobacillus casei subsp.rhamnosus IF03831)の生成する、酵母菌(清酒酵母、協会10号)のためのバイオフィルム形成因子の本体を明らかにするために大量培養を行い、分子篩による濃縮と分画、活性画分の繰り返しの逆相クロマトグラフィーにより精製を行い、液体クロマトグラフィーで単一のピークにまで精製した。分子量は3,000〜5,000Daの低分子物質である。精製品のバイオフィルム形成活性は加熱感受性であったが紫外吸収が認められず、活性本体がタンパク質である可能性は少ない。この組み合わせでの複合バイオフィルム形成は乳酸菌の生成する因子に依存しているので、因子型、または化学的情報伝達型と云える。 一方、穀物を原料とする醸造食品の醸造もろみ中には常に多種多数の乳酸菌と酵母菌が共存している。これら醸造に係わる乳酸菌、酵母菌の間でも特定の相手同士で複合バイオフィルム形成が行われるか否かを調べた。鹿児島県の福山壷酢の秋仕込み醸造試料より分離した多数の乳酸菌と酵母菌の間で種々の組み合わせで複合バイオフィルムの形成を調べた結果、特定の乳酸菌と酵母菌の間で顕著な複合バイオフィルムが形成されることを見出した。この組み合わせでは乳酸菌の培養濾過液中で培養した相手の酵母菌は単独でバイオフィルム形成が出来なかった。従ってこの組み合わせの場合の複合バイオフィルム形成は両者の接触が必要で、接触型、または物理的接触型と云える。
|