研究概要 |
本年度はまず、乳酸菌Lactobacillus casei subsp. rhamnosusの生成するバイオフィルム形成因子(酵母菌、協会7号が単独でバイオフィルム形成出来るようにする因子)の本体を明らかにすることを目的に同菌を大量培養し、培養濾液から、活性画分を分子篩で分け、逆層クロマトグラフィーを繰り返して単1ピークになるまで精製した。分子量は3,000〜5,000、疎水性だが酸性の物質、紫外部吸収が無く、かつ熱感受性であった。しかし微量のため残念ながら最終的な物質同定には至らなかった。この例を乳酸菌・酵母菌間の因子型相互作用と呼ぶことにした。一方、我々は鹿児島県福山町の福山壷酢の醸造過程を解析する際に採集した多くの乳酸菌と酵母菌の間で2種混合の複合バイオフィルム形成が行われるかどうかを調べた。その結果幾つかの組合せで顕著な複合バイオフィルム形成があり、中でも乳酸菌ML11-11と酵母菌Y11-43の組合せで旺盛な複合バイオフィルム形成が起こることを見出した。この場合はどちらの培養濾液も他方の菌の単独バイオフィルム形成を支えず、この組合せは両者の接触が必要と考え、こちらを接触型相互作用と呼ぶことにした。Y11-43の代わりに実験室酵母菌BY4741株でも複合バイオフィルムが形成された。従ってBY4741菌の欠失変異株群を調べて、接触認識に必要な酵母菌細胞表層分子を同定する遺伝的解析の道が拓けたことになる。一方、乳酸菌の方は他種の菌と置き換えが出来なかった。small rRNA DNAの部分塩基配列の決定から、ML11-11菌はLactobacillus plantarum、また酵母菌Y11-43はSaccharomyces cerevisiaeと同定された。
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