研究概要 |
膨大な種類を有するオリゴ糖や配糖体には新規機能開発の可能性が高く, まずはオリゴ糖の合成が望まれる. 本研究は, アノマー反転型加水分解酵素を用いた高効率オリゴ糖合成反応系の開発を目的とする. 平成20年度には大腸菌トレハラーゼを用いて, (1)塩基触媒のpKaの改変, (2)高効率逆反応(オリゴ糖合成反応)系の確立, を実施した. 実施内容を以下に示す. 一般塩基触媒(Glu), これと水素結合すると予想されるTyr, および基質に結合しかつ加水分解基質の水分子にも間接的に結合する残基(Asp)に注目し, 変異酵素(各Glu→Gin, Tyr→Phe. Asp→Asn)を調製・精製し, 精密に解析した. 変異酵素のトレハロース加水分解のpH依存性は大きく変化し, pKelが一般塩基変異酵素で1. 3pH単位, Asp変異酵素では4pH単位増加した. すなわち, 塩基触媒のpKaが増加し, 逆反応に適した解離状態になったと予想された. いずれの変異酵素も活性を大きく失い, トレハロースに対するκ_<cat>は野生型の10^<-4>-10^<-6>倍であった, これに対して逆反応(25mMグルコースとβフッ化グルコースからフッ素の遊離反応)の速度(κ_<cat>)は低下しつつも10_<-2>倍程度にとどまった. すなわち, κ_<cat>の比率で, 逆反応が野生型より70-1900倍高くなった. 一定条件(94mMβフッ化グルコース, 42mMグルコースを基質とし, 20℃, pH6, 40時間まで)でトレハロース合成反応を行った. βフッ化グルコースの自発的分解により生成するグルコースも含めて全量がトレハロースになるときの収率を100%として, 野生型酵素ではトレハロースがほとんど蓄積しないのに対し, 塩基触媒変異酵素では収率8. 6%, TyrおよびAsp変異酵素はそれぞれ68%, 59%と高効率でトレハロースを合成した.
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