研究概要 |
トランスグルタミナーゼ(以下TGaseと略記)は、生体内でタンパク質間の架橋反応を触媒する酵素である。この酵素は基質としてのタンパク質中のグルタミン残基とリジン残基との間を架橋させる反応を触媒する。ヒトなど高等動物では、8つのアイソザイムが組織特異的に発現し機能している。これまで代表者はファージディスプレイ型ランダムペプチドライブラリーを用いて、基質タンパク質中で架橋をされやすい配列(最小基質配列)の同定法を確立し、血液凝固や細胞死に関するアイソザイム(Factor XIII, TGase 2)について明らかにしていた。本研究課題においては、これらに加え、昨年度は皮膚特異的な酵素(TGase 1)および、産業利用に有効な放線菌由来のTGaseについて、同様のアプローチによって最小基質配列を明らかにした。 本年度はまず、TGase 1とともに皮膚表皮形成に重要なTGase 3についても検討し、最小基質配列として可能性のあるペプチド配列を数種得ている。また、これまで得られてきた最小基質配列の活用方法として、以下の2つの成果を得た。まず、蛍光標識した最小基質配列を組織切片と反応させ、特異的な架橋反応産物を皮膚、肝臓、腎臓において検出し、高感度で視覚化することに成功した。このことは本酵素の活性異常を原因とする病態研究の解析技術開発に貢献する可能性がある。さらに、これらのペプチドを利用した迅速で高感度なアッセイ法を確立した。 また本年度は、新たな最小基質配列の探索方法として、ランダムなcDNAを発現するファージ提示型ライブラリを用いて、この母集団から基質配列をスクリーニングするシステムの構築を試み、数種の基質候補となる配列を、ヒト脳cDNAライブラリから得ることに成功した。
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