研究概要 |
アクアポリンは水を通過させるチャネルを構成する膜貫通型タンパク質である。セリン残基のリン酸化によってチャネルが開き、脱リン酸化によって閉じる。換言すればタンパクリン酸化酵素とリン酸化タンパク脱リン酸化酵素が水チャネル調飾の主役を演じている。チューリップ花弁は日中開いており、夜間には閉じるが、温度依存的な開閉には水の輸送が必須で、関与する水チャネルを構成するアクアポリンの分子種を同定するために、花弁由来の細胞質アクアポリン遺伝子4種類(TgPIP1-1,TgPIP1-2,TgPIP2-1,TgPIP2-2)をクローニングした。これらの遺伝子産物のうちで、TgPIP2-2アクアポリンが水の輸送に関与する分子種であることをアフリカツメガエル卵母細胞で発現させる機能面から確証した。またリン酸化または脱リン酸化の阻害剤が水チャンネル活性に影響した。リン酸化を受けるセリン残基および水銀に感受性のサイトをSDM手法で確証した。TgPIP2-2のセリン残基35,116,188,274,277をアラニンに置換した変異体から、35,116,274番目に位置するセリンがリン酸化される候補であると予測し、これらのダブル、トリプル変異体を作成した。これらの変異体を用いて、リン酸化や脱リン酸化阻害剤の効果から、リン酸化を受けて水チャンネル活性を増加させる3種のセリン残基を確定した。 チューリップの花弁、葉、茎、塊茎、根における4種類の遺伝子発現量をRT-PCR報により比較した結果、水チャンネル活性が認められたTgPIP2-2がどの組織、器官においてもその発現量が最も高いことが確認された。根で吸収された水が植物体全体へと伝搬されるチャンネルがTgPIP2-2の翻訳産物で構成されており、チャンネルの活性化にリン酸化が関与している可能性を指摘できた。
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