研究概要 |
真核生物の細胞増殖や分化における転写制御に極めて重要な働きを持つヒストンの脱アセチル化酵素(HDAC)が細胞内でどのような活性制御を受けるのかという問題は、生物学的に重要な問題であると同時に有効なHDAC阻害剤開発にも必要である モデル真核生物酵母を用い、ヒトHDAC1と相同性の高いRpd3-Sin3複合体の細胞内での活性阻害に働く因子を探索することを目的として研究を行った。方法は以下の通りである。HDACによって抑制を受けるIME2のプロモーターの下流にHIS3遺伝子を挿入したレポーター遺伝子はHDACの作用によって発現が抑制されるため、この遺伝子をどう持つhis3株はヒスチジンを欠く最小培地(-His培地)では生育できない。しかし遺伝子量の増加によりHDAC阻害因子を多量に発現させれば生育可能になることが期待される。そこでこのレポーター遺伝子を作製し、RPD3 his5株とrpd7d3△ his3株に導入し検討したが、後者の形質転換体の-His培地での生育が極めて悪く、スクリーニングには適切でないと判断された。そこで、昨年度の研究でIME2と同様のHDACの挙動が確認されたINO1プロモーターでレポーター遺伝子を作製し検討した結果、RPD3の欠損に依存した形質転換体の-His培地での生育が確認できた。そこでこの株に多コピー遺伝子ライブラリーを形質転換して得られた,約30万の形質転換株から19の候補遺伝子を選抜した。これらの候補遺伝子についてRPD3に依存したものであるかをさらに詳細に検討を加えた結果、最終的に2種の候補が得られた。配列解析と遺伝子切り詰め実験の結果これらはRAD53、およびSTT4遺伝子であることを明らかにした。現在、これらが直接的にHDAC阻害に働くかについて検討を加えている。
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