植物における糖応答性を明らかにするため、サツマイモから得られた糖応答性プロモーターとルシフェラーゼの融合遺伝子を導入したシロイヌナズナを用いて、低濃度糖条件下においても融合遺伝子の発現量が高くなっている突然変異株を多数単離してきた。その中からhsi20について、Lerと呼ばれる別系統のラインと掛け合わせを行い、その掛け合わせ第二世代の植物の中から、低糖濃度においてもルシフェラーゼ活性が高いものを選抜した。5番染色体の上腕領域の遺伝子マーカーを多数作製し、詳細マッピングを進めたところ、hsi2の原因は、スクリーニングにもちいるために人為的に導入した融合遺伝子の挿入部位極近傍にあることが明らかになった。もともとhsi20突然変異株は、ABA処理による融合遺伝子の発現誘導が糖処理に比べて高いことも特徴として示されている。塩基配列レベルでは未確認ではあるが、導入した融合遺伝子のプロモーター部分に起こった変異が、hsi20変異株が示すような表現型をもたらしたのではないかと考えられる。 hsi12突然変異株は、簡単なマッピングとその葉にデンプンを蓄積されないという表現型から、葉緑体局在型フォスフォグルコムターゼ遺伝子(PGMの変異が予想された。そこで、hsi12株のPGM遺伝子領域の全塩基配列を決定した。この変異株においては、PGM遺伝子の13番目のエキソンの最後にある、エキソンの切断に必要となるAG配列がAAへと変異していた。これによりhsi12株のPGM遺伝子は、後半部分を欠失したタンパク質を作ることになる。hsi12株が低濃度の糖条件下で融合遺伝子を高発現したのは、この酵素が機能欠損したことによりデンプン合成が行われず、糖のプラスチドによる取り込みが減少し、細胞質の糖濃度が高まった結果おこったものであると判断された。
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