研究概要 |
ヒトに存在するペプチドホルモン、エンドセリン(ET-1)は、血管収縮ペプチドとして発見された。ヒトとげっ歯類ではペプチド3種(ET-1,ET-2,ET-3)が遺伝子ファミリーを形成し、受容体2種と共にETペプチドホルモン調節系を構成し、系として多彩な機能を担っている。ETファミリーに関する論文はPubmed検索で約19000件出てくるが、げっ歯類以前ではET調節系の詳細は、ヒトETの下等動物に対する薬理的効果を除き、ほとんど未解明である。そこで本研究では、ET調節系の遺伝子群の起原や分子進化を解明する。動物界における血管収縮ペプチドETファミリー3種の分布と配列・構造の多様性を解析するために、各種動物(哺乳類から魚類まで)の遺伝子・蛋白質データベースから関連・類似配列を探索した。データベースがないあるいは探索できない動物に関し遺伝子クローニングを実施した。特異的な遺伝子のクローニング法の1つRACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)法を改変して、既知動物の配列を元にゲスマー(guess oligo primers)を順次設計・改良しながら、動物の脳腸組織等からmRNAを抽出しcDNA(ライブラリー)に変換し、ゲスマーでPCRクローニングを行った。進化の過程を遡りながら関連cDNA断片を単離し、塩基配列解析からペプチド配列を明らかにし、さらにcDNA全長を取得しその解析からペプチドの前駆体蛋白質の全長を明らかにした。NJ法(解析ソフト)等で、哺乳類から魚類に至るペプチド前駆体遺伝子の分子進化を解析した。「活性を有する原始エクソンが誕生し、エクソン重複により原始遺伝子が生成し、起原動物から哺乳類に至るゲノム重複によって、ファミリーとして構造の多様性や特異性を獲得して来た」と思われた。
|