研究概要 |
細胞膜は様々な外部環境因子感受の場である。これまで乾燥・塩および低温などの水分ストレスに対する植物の耐性機構を解明する為に、申請者らは細胞膜局在性の水分ストレス応答性受容体型キナーゼに着目し解析した。水分ストレス及びその応答に重要な植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)に誘導性を示す、シロイヌナズナ受容体型キナーゼReceptor-like Protein Kinasel,RPKlは,膜局在性の受容体型キナーゼであり、我々は欠失変異体rpkl-1,rpkl-2が,植物の水ストレス応答に重要な植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)に対し非感受性を示すことを明らかにした。RPKlは種子休眠、根の伸長成長、気孔閉鎖、一遺伝子発現の調節等、様々なABA応答反応の制御を行うこと、およびRPKlが細胞膜上で機能する受容体タンパク質でるため、細胞膜でのABAシグナル伝達に重要な役割がもつことが示唆された。シロイヌナズナのRPKlの高発現がシロイヌナズナに与える影響を解析するために,CaMv35Sプロモーター制御下でRPKlを過剰発現する形質転換植物体を作製した。得られた植物体はABAによる根の伸長抑制、気孔閉鎖等に対しABA高感受性を示した。また,RPKl過剰発現植物体は乾燥ストレスに対し耐性を示すことが明らかになった。さらに、マイクロアレイ解析の結果,RPKl過剰発現体では,水分ストレス応答性遺伝子および活性酸素(ROS)生成系遺伝子の発現が誘導されており、ROS消去系酵素活性が上昇していた。RPKl過剰発現体は活性酸素ストレスに対する耐性を示した。以上の結果はRPKlの高発現により、水分ストレスだけでなく活性酸素ストレス耐性に関与するシグナル伝達経路が増強されたことを示唆している。RPKl-GFPの局在性の解析の結果,RPKlは通常の生育条件下では細胞膜に局在し,高浸透圧下では細胞膜および未知の顆粒状の細胞内小器官に局在がみられた。RPKlの局在する細胞膜の動態が浸透圧条件下で変動することにより、RPKlの機能が制御されることが示唆された。
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