研究課題
鱗翅目幼虫の唾液から、植物の防衛反応を誘導するエリシターvolicitin類(FACs:Fatty acid Amino acid Conjugates)が同定されている。申請者は、自身の生存に不利に働くエリシターを何故幼虫自身が生合成するかに注目し、FACs類の幼虫にとっての生理的意義の解明を進めている。平成20年度には、以下の点を明らかにした。1) 放射性同位体14C-ラベルのグルタミン及リノレン酸を与えたところ、リノレン酸に比べてグルタミンはvolicitin類に取り込まれにくかった。2) 15N-ラベル体グルタミン酸、15N-ラベル体アンモニアを与えた場合、いずれもvolicitin類がラベル化された。3) In vivo 15N-NMR測定から、15N-ラベル体アンモニアを与えると、ガンマ-位がラベルされたグルタミンのみがvolicitinへ取り込まれた。グルタミン酸と遊離アンモニアから、グルタミン酸を合成するグルタミン合成酵素(GS)が、volicitin縮合酵素と隣接して働いている可能性が示唆された。これらの結果より、volicitin類はGSの産物であるグルタミンを脂肪酸との縮合物として細胞外へ排出することで、GSの反応を促進すると考えられる。この仮説を、CNアナライザーを用いた窒素同化効率の測定により検証した。リノレン酸の存在によって餌中窒素成分の吸収効率は40%未満から60%にまで改善された。これは、volicitin類を介した「脂肪酸による窒素代謝効率化」という極めて新しい生理代謝モデルであり、植物を餌としながら鱗翅目幼虫が驚異的成長をとげるメカニズムの1つであると考える。
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Proc Natl Acad Sci USA 105
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http://www.chemeco.kais.kyoto-u.ac.jp/