(1)ショウジョウバエにおけるvolicitin類縁体の生合成 双翅目ショウジョウバエの幼虫からリノレン酸とグルタミン酸の縮合物を同定した。幼虫全体から粗酵素抽出液を調製し、in vitro生合成について検討したところ、直接グルタミン酸が脂肪酸と縮合した。一方、直翅目タイワンエンマコオロギでは、先ずグルタミンが脂肪酸と縮合し、生成したグルタミン縮合物のガンマ位が加水分解されてグルタミン酸縮合物が生成する。すなわち、ショウジョウバエもタイワンエンマコオロギも、リノレン酸とグルタミン酸の縮合物を生合成するが、その生合成経路は異なることを見出した。鱗翅目ハスモンヨトウ幼虫からvolicitin類縁体としてグルタミン縮合物が同定されており、幼虫の窒素代謝の効率化に役立っていることを我々は見出している。生合成過程を明らかにすることから、グルタミン酸縮合物の昆虫における生理機能の解明を目指す。 (2)発育段階におけるvolicitin類縁体の消長 ショウジョウバエ幼虫からvolicitin類縁体を同定したので、蛹・成虫についても調べた。その結果、蛹からは検出されなかったが、成虫からは同定できた。成虫におけるvolicitin類縁体の存在部位やその役割の解明が、今後取り組むべき問題となる。本発見は、完全変態する昆虫の成虫からvolicitin類縁体を同定した最初の例となった。蛹では、volicitin類縁体が他の化合物に変化されて貯蔵していると考えている。今後は、多変量解析の手法を用いた網羅的な代謝物の分析から、その貯蔵体を追跡する。
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