オクトパミン(OA)は、無脊椎動物において神経伝達物質などとして機能するフェノールアミンであり、記憶・学習などさまざまな生理現象に関与している。OAレセプターはGタンパク質共役型レセプターであり、細胞外のOAの情報を細胞内に伝える役割をしている。本研究では、カイコには4種類のフェノールアミンレセプターが存在することをカイコゲノム情報を利用して明らかにし、これらをクローニングし、HEK-293細胞に発現させて機能解析することを目的としている。α-アドレナリンレセプター様OAレセプターBmOAR1は、OAの結合によって細胞内cAMPとCa^<2+>レベルの両方を上昇させることが分かった。この二つのシグナル伝達経路を分ける分子スイッチとして412番目のチロシン残基が重要な働きをしていることを明らかにした。一方、β-アドレナリンレセプター様OAレセプターBmOAR2をカイコ神経系からクローニングした。このOAレセプターは、低濃度のOAの作用で細胞内cAMPレベルを大きく上昇させることが分かった。すでにクローニング、機能解析を終えた3番目のフェノールアミンレセプターであるチラミン(TA)レセプターBmTAR1による細胞内Ca^<2+>生成を調べたところ、そのような機能はなく、cAMPレベルの低下のみを引き起こすことが判明した。4番目のフェノールアミンレセプターであるチラミンレセプターBmTAR2を新たにカイコ神経系からクローニングした。このレセプターは種々の生体アミン関連物質の作用で細胞内Ca^<2+>レベルを上昇させた。
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