本研究では、カイコからフェノールアミンレセプターファミリー遺伝子をクローニングし、HEK-293細胞に発現させて機能解析することを目的としている。今年度は、β-アドレナリン様オクトパミンレセプターBmOAR2の機能解析をおこなった。BmOAR2は、オクトパミンの濃度100nMにおいて最大の細胞内cAMP生成を引き起こした。しかし、これより高濃度のオクトパミンではcAMP生成が低下した。合成アゴニストであるDMCDMも同様の二相性の応答を示したが、最大応答はオクトパミンより低い1nMで起こった。チラミンとドーパミンにはほとんど反応しなかった。レセプターに対する親和性はオクトパミン>チラミン>ドーパミンの順となった。アンタゴニスト試験では、クロロプロマジンがオクトパミンによるcAMP生成を阻害した。細胞内Ca^<2+>濃度上昇は引き起こさなかった。次いで、新規チラミンレセプターBmTAR2の機能解析をおこなった。チラミンに対してはnMオーダーで特異的に応答し、細胞内Ca^<2+>レベルを上昇させた。これに対してオクトパミンの場合は、100μM以上でのみCa^<2+>上昇を惹起したので、明らかにチラミン選択性である。[3H]チラミンを用いた結合実験でも、BmTAR2はチラミンに対してはnMオーダーの親和性を示したが、オクトパミンに対してはμMオーダーであった。細胞内cAMP生産とは共役していなかった。オクトパミンレセプターにおいてアゴニスト活性を示した化合物は、BmTAR2に対してはいずれも活性を示さなかった。3化合物がアンタゴニスト活性を示し、その活性順はヨヒンビン>クロロプロマジン>ミアンセリンであった。以上、2年間で4種のレセプター遺伝子のクローニングと解析を終えた。今後、本研究で得られた知見をもとに、生理学研究が進展することが期待される。
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