アーバスキュラー菌根菌(AM菌)は陸上植物の80%以上と共生関係をもつ内生菌根菌である。一方、アブラナ科やアカザ科、マメ科のルピナスなどAM菌と共生しない植物もある。AM菌は宿主植物の根の近傍では激しく菌糸を分岐させるものの、非宿主植物の根ではこの分岐は起こらない。この菌糸分岐を誘導する物質がストリゴラクトンである。なぜ、アブラナ科などの種がAM菌と共生しないのか、その機構についてはほとんど明らかにされていない。非宿主植物であるナタネはストリゴラクトンの分泌量が非常に少ない。一方、同じ非宿主植物であるシロルーピンはストリゴラクトンを、宿主植物であるミヤコゴサと同程度に分泌している。そこで、シロルーピンはAM菌の菌糸分岐を阻害する物質を同時に分泌しているものと考え、その阻害物質の検索を行った。 シロルーピンを低リン酸条件下で水耕栽培し、得られた水耕液から精製単離を行い、既知化合物であるlicoisoflavoneB(1)、alpinumisoflavone(2)、sophoraisoflavoneA(3)と新規化合物であるlupindipyranoisoflavone A(4)を得た。AM菌Gigaspora margaritaに対する菌糸生育試験において化合物2は0.63μg/disc、化合物1と3は1.25μg/disc、化合物4は3.75μg/discでそれぞれ菌糸伸長を完全に阻害した。一方、菌糸分岐試験において化合物1と3がブランチングファクターであるalectrolの菌糸分岐を阻害した。 以上の結果より、シロルーピンの根の近傍では、化合物1や化合物3がAM菌の菌糸伸長や菌糸分岐を阻害することにより、AM菌の宿主認識や根への感染を阻害していることが示された。
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