研究概要 |
本年度は、イトマキヒトデの初期胚において機能的なクロマチンが形成される分子過程を生物有機化学的に解明することを目的として、次下の研究を進めた。(1)核型Transglutaminaseによって初期胚において形成される二量化ヒストンの発生上の役割を明らかにするために、核型Transglutaminase mRNAアンチセンスオリゴを胚細胞内に導入し、本酵素タンパク質の生成を抑制することによって、ヒストン二量化の阻害を試みた。しかし、この操作による発生停止は観察できなかった。本酵素タンパク質mRNAが複数個検出されたので、次年度は酵素タンパク質全てのサブタイプの生成を阻害することによって発生停止を試みる。(2)核型Transglutaminaseの活性あるいはその遺伝子発現を阻害する天然有機化合物を見いだし、これを用いてヒストン二量化を阻止し、二量化ヒストンを含有するクロマチンが発生進行にどのような役割を有するかを明らかにする目的で、多数の放線菌株培養液を準備し、そのイソプロパノール抽出物をイトマキヒトデ胚に与えて発生させた。胚が前期原腸胚期まで発生し、この時期で発生停止をもたらすサンプルを選択したが、最終的に、核型Transglutaminase活性を選択的に阻害する物質は得られなかった。今後は、10,000種以上の化合物からなるケミカルライブラリー中に目的とする化合物を探索し、目的とする研究の遂行を続ける。
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