研究課題
本研究は研究代表者らが見いだした本わさび(アブラナ科ワサビ属、Wasabia japonica Matsum.)に含まれる成分6-methylsulfinyl hexyl isothiocyanate(6MITC)のインスリン様活性の効果と作用機序に関して、細胞および動物実験において明らかにすることを目的としている。本年度は、前年度までの健常ラットなどを用いた検討に引き続いて、肥満2型糖尿病モデルマウスKK-Ayを用いて6MITCの抗糖尿病効果を検討した。その結果、血糖値の上昇抑制、インスリン値の低下傾向に加え、糖化ヘモクロビン値の低下など臨床でも用いられる指標に有意な糖尿病態の改善効果が認められた。作用機序の解析の一端として、これまでに肝細胞で認められた糖新生活性に対する抑制効果の有無を、肝臓でのPEPCKやG6Paseの遺伝子発現量をもとに検討したところ、期待したような変化は認められなかった。従って、in vivoにおける6MITCの作用機序には肝臓以外の組織への効果も関与しているものと推察された。また6MITCの構造に注目して、作用機序を解析したところ、methyl-S-oxide構造を持つS-methyl-L-cysteine-S-oxideでは有効性は認められず、isothiocyanate構造を持つ他の化合物では弱いながら、類似の効果を認めた。したがってisothiocyanateは6MITCの作用発現の上で重要であると考えられるが、必ずしも同等の効果を与えないことから他の構造や膜透過性などの影響なども考慮する必要があると考えられた。
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Biosci. Biotechnol. Biochem. 72
ページ: 2918-2925