これまで抗酸化物質として活性酸素種を直接消去する作用が注目されていたフラボノイドなどの食品由来ポリフェノールには、シスチン・グルタミン酸トランスポーター(xCT)を介した組織や血漿におけるレドックスの制御というこれまでに知られていない機能を有する可能性が推定された。シスチン・グルタミン酸トランスポーターは、内在性抗酸化物質として中心的な役割を担うグルタチオン(GSH)の合成や細胞外のレドックスバランスを維持するのに必須の分子であることが知られている。本研究では、1)食品由来フラボノイドが生体レドックス状態にどのような影響を及ぼすか、2)食品由来フラボノイドによるレドックスバランスの制御は、シスチン・グルタミン酸トランスポーターを介するものか、3)生体レドックスバランスを維持することは生理学的・病理学的にどのような意義があるのか、を明らかにすることを目的として研究を行った。本年度は、ケルセチンやラムネチン等、十数種類のフラボノイドを用い、細胞内GSHがどういう影響を受けるか検討した。その結果、いくつかのフラボノイドには、細胞内GSHを上昇させるものがあり、それらのフラボノイドは、すべてxCT遺伝子の発現を上昇させることが示された。また、フラボノイド添加によりGSHと同様、細胞内システインレベルも有意に上昇した。この時、細胞外システインの濃度も上昇することから、フラボノイドによって細胞内外のレドックスが還元方向に傾くことがわかった。次に、フラボノイドによるxCTの発現上昇機構を調べ、転写因子Nrf2の活性化を介していることを明らかにした。また、構造相関解析により、フラボノイドによるGSH上昇には、B環のカテコール構造とC環の二重結合が重要であることがわかった。
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