研究概要 |
100℃以上で臨界点(374℃)以下の温度領域で,液体状態が保たれた亜臨界水は常温常圧の水に比べて,比誘電率が低く,またイオン積が500〜1000倍程度大きい.これらの性質によって,亜臨界水は疎水性物質の抽出への利用や酸または塩基触媒としての利用が可能である,亜臨界水中での食品成分の分解反応速度がpH変化および電気伝導度に影響する塩に影響を受ける現象に関して,亜臨界水中での糖の加水分解過程に及ぼす塩の影響について検討した.ガラクトースの分解速度は,共存させたNaC1濃度が高いほど高くなった.グルコース,フルクトース,ソルボースの分解もNaC1の共存によって促進されたが,マンノースは影響を受けなかった.また二糖のショ糖も影響を受けなかった (Ohshima et al.,Eur.Food Res.Technol),疎水性アミノ酸であるフェニルアラニンと分岐鎖アミノ酸の亜臨界水中での分解動力学を解析したところ,分岐鎖アミノ酸は1次反応に従って分解した.一方,フェニルアラニンは0次反応および自触媒型反応を組み合わせた反応機構が現象をよく説明した.分解によって出口のpHは上昇した(藤田ら,食品工学,構造,物性に関する京都フォーラム学生発表会発表).糖の類縁体であり,酸性物質であるグルクロン酸,ガラクチュロン酸の分解を試みたところ,pHは分解によってさらに低下した,反応機構はそれぞれ異なった(未発表).亜臨界水中での食品成分の分解動力学とpH虫関係を完全には解明できなかったが,pH変化および塩濃度が分解機構に大きく影響することを明らかにした.
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